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映画美しい星を鑑賞したのでネタバレありの感想を書いてみた

   

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現在公開中の映画美しい星。家族が宇宙人に突然覚醒したという、「なんだそれは」という物語です。三島由紀夫原作で、あの「桐島部活やめるってよ」や「紙の月」で有名な吉田大八監督の作品、そして豪華キャストで注目されている映画です。

 

今回は、こちらの映画美しい星を鑑賞してきたので、ネタバレありでの感想を書いてみたいと思います。

ネタバレが嫌な方はこちらからネタバレ無しのレビューもご覧になれます。
映画美しい星を鑑賞したのでネタバレ無しでレビューを書いてみた

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映画美しい星を鑑賞したのでネタバレありのレビューを書いてみた。

 

映画美しい星は、4人家族がある日突然に宇宙人に覚醒し、それぞれの「使命」に奔走するというお話。

 

当たらない気象予報士の重一郎と専業主婦の伊余子。そしてメッセンジャーのバイトをしている兄の一雄、大学生の妹である暁子の4人家族が、重一郎の誕生日を祝う会をレストランで行うシーンから物語は始まります。

 

このシーンで4人の気持ちが全く揃っておらず、バラバラになっていることがすぐにわかります。

 

しかも、なんと重一郎は同じ番組の気象予報士の若い女性と不倫中!

 

そんな4人のなかで最初に覚醒したのは重一郎でした。不倫交際中の女性とホテルに行った帰り。突然車に向かってくる発光体との接触がそれでした。その後、彼は自分が「火星人」であることに覚醒します。

 

その次に覚醒したのは重一郎の息子の一雄。血気盛んで尖った気性の彼は、あるひ日、メッセンジャーの仕事中、乱暴な運転をしている車に当たられかけ、腹を立てて追いかけます。その車は実はとある政治家の乗っていた車でした。そこで政治家の秘書を務めていた黒木和巳にスカウトされます。

 

そんな彼は、女性とのデート中、プラネタリウムで映された水星を見て「水星人」に覚醒します。

 

最後に目覚めたのは妹の暁子。彼女は美しくありながら、その美貌に引け目を感じる、少し浮いた大学生でした。ミスコンの声がかかるも、それを無視するような孤高の女性、という感じです。そんな彼女が、とある日に道端でひとりで路上ライブをしていた男性、竹宮に出会います。彼の「金星」という歌に強烈に惹かれ、金沢でのライブに赴き、そこで彼に「金星人」であることを諭され、覚醒します。

 

4人家族のなかで唯一宇宙人として覚醒しなかったのは、母の伊余子でした。しかし、彼女は暇をもてあまし、お茶会友達の裕福な女性から「水」ビジネスをすすめられ、のめりこんでいきます。

 

3人の覚醒、そして母のビジネスへの傾倒。ここから4人の異様で少し狂気的な行動が描かれていきます。

 

特に異様で大きな動きをしたのが、火星人の父、重一郎でした。彼は火星人の「使命」として、地球温暖化によって自然災害のリスクが高まっている地球の危機的状況を、「地球人の皆さん」へ、「太陽系連合」からの警告であるとして、天気予報の時間に全国のお茶の間に向かって呼びかけ始めるのです。

 

また一方で、暁子は「金星人」として、地球で誤って氾濫している「美」の基準を正すために、大学のミスコンテストに参加することにします。遠く金沢に離れた竹宮のことを思い、金星人としての自覚に恍惚としながら、宇宙と交信する暁子の様子は、もうはたから見たらかなりヤバイ人ですが……。

 

また、兄の一雄は、黒木のもとで、政治家の事務所で働き出します。ニートがまさかの大出世!しかし、そんなある日、実は政治家を裏で操っているのが黒木であるということが判明します。実は、黒木もまた、地球人ではなかったのです。ただ、水星人である一雄や、金星人、火星人である家族とは違い、黒木の故郷の星は語られません。

 

黒木の自覚している使命は、地球のために、地球人にかわって「決定」していくこと。その彼の使命と、重一郎の金星人としての使命が相対立するところに、物語の焦点があります。

 

その焦点があたるのは、彼らをとりまく環境が一変して瓦解していった先にあります。

 

重一郎は、太陽系連合の金星人としての使命に燃え、ニュース番組にコメンテーターとして出演していた黒木の操る政治家に、「環境問題を今すぐなんとかすべき」と強く批判して、番組を放送事故にまで追いやります。その結果、彼はクビになります。

 

また、母の伊余子は水ビジネスで扱っていた水が、実はニセモノであったことを暴露され築き上げた信頼も全て失ってしまいます。

 

そして妹の暁子は妊娠。本人は処女妊娠である、と金星人としての自覚にますます恍惚を覚えるのですが、無職になった重一郎が竹宮のいる金沢へと足を運べば、実は竹宮はほうぼうで女を作り、彼女たちに金を借りていたことが判明します。金星からインスピレーションをもらって作ったと言っていた「金星」という歌も、彼ではなく、同じバンドの女性の作ったものでした。

 

虚構が明らかになったものの、身重の暁子を思い、「竹宮は金星に帰ったよ」と彼女が傷つかないウソをつきます。

 

 

 

こうして、映画を見ている観客からすれば、彼らの「宇宙人」としての自覚が、実は単なる勘違いであったという展開が予想できるようになっていきます。きっと、彼らは家族で狂ってしまった狂人なのだ、と。

 

そう思えるような、描写が続いていくなか、重一郎は政治家への侮辱を行なったということで、黒木側から訴えられます。番組全体を訴える、という黒木の姿勢に、番組は、重一郎にテレビ放送を通して視聴者に謝罪させることで会社の危機を乗り越えようとします。

 

そして、黒木や黒木のそばで働く一雄たちが見守るなか、テレビカメラの前で謝罪する重一郎。しかし、彼は「太陽系連合がただの作り話」と話すべきところで、再び激昂して「火星人」として、地球の人々へと環境問題について早急に対処すべきだと訴え始めるのです。

 

そんな彼に、テレビカメラの前に躍り出て反論したのが、なんと彼の息子の一雄。

 

ここで二人の論争が繰り広げられます。地球は今のままでは資源が枯渇して、異常気象により人類は滅亡する、と今すぐ対処すべきとする火星人の重一郎。それに対して、水星人である一雄は、今まで何もしてこなかったのに今更何を言うのか、と反論します。しかし、らちがあかない二人の議論。

 

ここで、二人は違う星の住人としてではなく、ただひとりの父と息子として、家族として議論しよう、となります。

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父は言います。「今すぐ対処すべきだ」。しかし、息子は「お前たちが若い時に汚染してきたものを、子供の世代に対処させるのか」と反論するのです。自分たち親世代がきちんとしてこなかったから、今子供の世代が苦しい思いをしている。その対処を子供たちに押しやるのはどういうことか、と。

 

それに対して父は、「だからこそ今対処するのだ」とさらに反論します。もうこれ以上、子供たちの世界を汚してはならない。子供たちの未来を奪わないために、今すぐ対処すべきなのだ、と。

 

この二人の議論が展開されるシーンは、まさに三島由紀夫作品らしい格調高さを表しているとともに、現代社会の不条理な構造を描きだすことが得意な吉田監督の表現力が三島作品と化学反応を起こしているような、ゾクゾクとさせるようなシーンでした。

 

「火星人」として「父」として、地球人のために声をあげる重一郎は「こんなに美しい星なのに!」と激昂します。その美しい星を守るために、今すぐ動かなければならない、と。

 

そのときずっと押し黙っていた黒木が、重一郎に問います。その地球の美しさとはなにか、と。重一郎は「自然」であると答えます。海や空、そして豊かな緑。それらを「美しい」と評した重一郎に、「では人類は必要ない」と黒木は冷たく言い放ちます。

 

つまり、「美しい地球」を守るためには、それを破壊している「人間」は必要ないのだと。そして彼は地球を破壊させることができる、ととあるスイッチを手にします。それを押せば、地球人は滅亡する。今すぐ、重一郎が「金星人」であることを否定し、その使命を捨てなければ、このスイッチを押す、と。それとも、本当に自分が「金星人」であるというならば、テレビカメラの前でUFOを呼んでみろ、と言います。

 

黒木の挑発にのり、テレビ局の屋上で、踊り狂いながら、必死でUFOを呼ぶ重一郎。そのの姿は、狂気と哀愁が漂っていて、観る者の気持ちを揺さぶらずにはいられないものでした。リリー・フランキーの圧巻の演技が魅力的な場面だと言えると思います。

 

しかし、UFOは出現せず、黒木は無情にもスイッチを押してしまいます。そしてそれに連動するように、口から血を吐きだして倒れてしまう重一郎。

 

 

怒涛のテレビ局での場面は切り替わり、次に重一郎が眠る病室のシーンへ。

 

実は、彼は末期のガンであったことが判明。

 

職も失い、余命もあと一か月というどん底と言っていいほどの状況の重一郎。息子の一雄もまた、黒木から解雇され、ニートへと戻ってしまいます。

 

家族全員がどん底にあるなか、暁子に「本当のことを言って」と言われて、竹宮が実は薬をつかって色んな女性に暴力を行なっていた人間だったことを重一郎は告白します。

 

つまり、暁子は竹宮に強姦され、その子供を妊娠したのだ、と。それを聞いて竹宮への執着から解放された暁子は、「私も本当のことを言う」と、父である重一郎に彼が余命一ヶ月であることを宣告します。

 

 

呆然とする重一郎に、「ごめんなさい」と抱きついて泣きじゃくる暁子。この親子のシーンには、「宇宙人」としてではなく、「地球人」としてのただの親子の絆が現れていてました。

 

娘が傷つかないようにウソをついた父親と、父親の死を黙っている辛さに我慢できず、本人に言ってしまい、子供らしく泣いて謝る娘。父の優しさと、その父を失うことが受け容れきれない娘の揺れ動く心情が、胸を締め付けるシーンでした。

 

 

父親の死を間近にして、家族は暁子の勘を頼りに、彼の故郷の「火星」のUFOが現れる場所に父を連れて行ってあげようと決めます。

 

病院を抜け出し、車で東京から郊外の山奥へと行く家族四人。

 

 

映画冒頭ではバラバラだった家族が、重一郎を中心にしっかりとひとつになった瞬間でした。

 

そしてその道中、重一郎はある景色を見て「美しい」と感じます。彼が美しいと感じた星の景色は、東京の街中。

 

様々なネオンに夜でも明るく、多くの人々が行き交う大都市。その人びとや街のコンビニや店のネオンを見て、彼は「この星は美しい」と感じるのです。

 

 

テレビ局での黒木との議論では、彼が地球を「美しい星」であるとしたのは、豊かな自然故だとしましたが、ラストで彼は人間が作り出した景色や人間そのものを見て「美しい星」であると感じたのは、感動的な落としどころでした。

 

 

そして家族が山頂に到着した瞬間、場面は一変。

 

真っ白な宇宙船のなかに変わります。

 

誰もいないそこに、重一郎だけが立っている真っ白な空間。そこに、機械的な女性のアナウンスで、「地球での長い任務ご苦労様でした」と声がかかります。

 

そして、彼に故郷の家族のもとへと帰りましょう、と言うのです。

 

 

しかし、重一郎は「家族は!?」とUFOの窓へと走り寄ります。女性のアナウンスは、家族は故郷の星にいる、と言いますが、彼が探しているのは地球で得た家族。

 

彼が窓から外をながめたその先には、重一郎の身体を支えながら、宇宙船を見上げる家族の姿が見えました。

ここで物語は終わりを迎えます。

 

まとめ

最後の最後まで、予想しづらく、常にドキドキさせてくれた映画でした。ところどころ笑える場面や、「この人たちおかしい」と思わせるようなシーンがあるなかで、

 

・環境問題への提言

・人間の存在の肯定

・家族の絆

 

これらのメッセージが濃厚に、そしてテンポよく盛り込まれた映画だと感じました。

 

最後まで彼らは実は「宇宙人」ではないのでは、と思いながら観ていたのですが、まさか最後の最後で「実は本当に宇宙人なんです」という驚きのラストになるのは圧巻でした。

 

そのラストが面白くもあり、そのラストだからこそ、「地球人」としての家族四人の絆がさらに強いメッセージとして生きてきたと感じました。

 

単なるSF映画でもなければ、人情ものでもない。そして社会派な映画でもない。そんな不思議な映画「美しい星」でした。

 

最後の最後、東京の街並みを見て「美しいな」と重一郎が感じるシーンは、涙がとまりませんでした。まさか、作中、妙な踊りを踊って笑わせてくれていた彼に泣かされるとは!!

 

これは、現代の様々な問題があるなかでも、人間を最大限に肯定しようとする、監督の謳歌だと感じました。

 

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